AI時代に重要なアナログで考える力

近年、社会のペーパーレス化やデジタル化は進み、スマートフォンやSNSの普及、AIの進化なども加わり人々は日々デジタルの情報に囲まれて仕事をしたり生活をしています。私自身、メディカルライティングにおける生成AIの活用方法についてセミナーをしたり、AIを積極的に活用することで、仕事の効率化や新しい仕事を生み出せないか日々思考錯誤をしています。
しかし一方で、最近は自分の中でAIの使用頻度が高くなるにつれ、以前よりもノートや手帳に手書きで考えをまとめたり、本も電子書籍ではなく紙の本に感じたことを書き込むことが増えています。これは、仕事でPCやデジタル機器に長時間向かったり、最新のAIの情報を追いかけ続けることに、やや精神的に疲れている部分もあると自分では感じています。一方で、手書きを増やすことが仕事の質の向上に役立っているという実感もあります。
明らかに、生成AIが登場する以前よりもアナログな仕事の進め方を意識するようになっています。今回の記事では、手書きで紙に書いて仕事を進める、アナログ的な仕事の進め方の有用性について書きたいと思います。
文書をチェックする際は、PC画面ではなく、紙に印刷して赤ペンで意見や修正を書き込む
私は医薬翻訳者として仕事をしています。翻訳者は通常、クライアントから提供された原稿を一度翻訳をした後、訳文に間違いがないかを自分でチェックします。近年は、セキュリティ上の理由から、原稿ファイルの印刷・プリントアウトが禁止されることが多くなりました。それでも、印刷が禁止されていない場合はできるだけ一度紙に印刷して、赤ペンを持って自分の訳文をチェックしています。
翻訳やその他ライティングのレビューをしたことがある方はご経験があると思いますが、PC画面上で文書をチェックするよりも、紙に印刷してチェックをしたほうが、明らかに間違いに気づきやすいです。このことは研究でも示されているようです。
さらに、プリントアウトして確認することのよいところは、付箋を貼ったりマーカーでしるしをつけたりすることで、例えば数十ページ前の記載との整合性や頻出用語の表記ゆれを確認しやすいことです。
この、長文テキストの整合性を付箋やマーカーでチェックすることは、現在の最新の生成AIでも簡単ではないようです。生成AIを使用しても、例えば参考資料を添付することで整合性はチェックできます。それでも、長い参考資料や原稿をAIに与えてしまうと、AIはどこを参照すればいいのかわからなくなるようで正確にはできません。また、確認箇所の前後の文脈のみを参照させる方法もありますが、この場合は数十ページ離れた遠い部分をAIは確認できません。
付箋やマーカーで長文ファイル一度にチェックすることは、アナログな方法ですが、現在の生成AIは完全に正確には行うことができません。これができるのは、経験を積んだ人間だけです。この昔ながらのアナログな確認方法は結構凄いのです。
人間は手を動かして書くことで思考が進む
手を動かして書くことによる効果はもう一つあります。SNSで発信したり、ブログ記事をよく書く方はよくお分かりになると思いますが、頭の中で考えていることを手書きでまとめたり、Wordファイルに書いてみることで、思考が進みます。逆に、書かずに何かを考えていても同じことが頭の中で堂々巡りしてしまい、なかなか考えが前に進みません。
人間は、手を動かして書くことで思考が整理され、考えがまとまったり次の思考に進むのだと思います。最近は、「書くこと(アウトプット)で思考が進む」ことの重要性が認知され、ブログやSNSに自分の経験や考えをアウトプットすることが普及していると感じています。
思考を整理したり勉強をするときは、PCとキーボードでタイピングでもよいですが、手書きをするとより効果が高いことが様々な研究で示されているようです。ペンを持ち紙に文字を書くことは、複合的な認知運動であり、集中力や記憶力が高まるそうです。
手書きのノートの有効性
このように、ノートとペンを使って手を動かして何かを書くことは、人間が思考をするうえで重要だと考えています。ChatGPTを開発しているOpenAI社CEOのサム・アルトマン氏もボールペンでリングノートにたくさんメモを取っているそうです。手書きのノートは、「思考するためのツール」として重要なのだそうです。世界最先端のAI企業のトップが手書きを大切にして仕事をしているとは面白いものです。
※以下がその動画です。YouTubeは日本語の字幕表示もできるので是非見てみてください。
Sam Altman's Method for Clear Thinking:https://www.youtube.com/watch?v=tDmjz6HB-yw
AIが進化し、仕事や日常生活で使用することが当たり前になる一方で、人間が物事を学んだり、考えたりすることの本質は変わっていないように思います。日常業務の中ではどんどんデジタル化が進みます。新しいツールに慣れたり、変化の激しい世の中に対応することにやや疲れを感じることもあると思います。そんなとき、手書きのノートを活用してアナログに戻ることで、ゆっくり自分のベースで深く考えて仕事ができるようになります。
このように、デジタルとアナログのバランスを取ることをこれまでよりも意識することが、より良い仕事をしたり、楽しく生活をする上で大切だと思っています。

